ひだまりの夢 ver. アルフレッド |
――あの人はどこへ行ってしまったのだろう。 さんさんと光が降り注ぐ森を歩き回り、少女を探す。 少女は森がぽっかりと空けた、ひだまりの中にいた。 「くさめさん。」 かすれた声で呼ぶと、銀の長い髪の少女は振り返った。 「くさめさん。」 少女はなにも言わず、翠玉の目は俺をとらえたまま離さない。 「どうしたの。」 あまりに小さい声で問われた。 降り注ぐ光の中で少女は消えてしまいそうだった。 「どこへ、」 ――行くんですか? 行ってしまうんですか? そんなことを問うても意味はないだろう。 決心をして、問うた。 「あなたは、誰ですか?」 すると彼女は薄くほほえんで、なにやら口元を動かした。 「――え?」 また何事か言うのだが、聞き取れない。 「――もう一度、もう一度言ってくださ――」 はっと気がつくと、少女は消え、光が降り注ぐ空間があるだけであった。 カッコウ、と鳥が鳴いた。 ――夢を見た。 はっと目が覚めたアルフレッドは、大きく息をつくと、ぼんやりと天井を眺めていた。 少女の夢なんて何度も見ている。幼い頃憧れた戦士としての少女と戦う夢ではなく、今のようにふとかき消えてしまう夢を。 少女はいったい何者なのだろう。知りたいとは思わないと言い聞かせているが、本心では違うことくらいわかっている。 「――くだらない、夢さ。」 くだらないと自分に言い聞かせる。納得するふりをする。 窓から朝日が差し込んだ。美しい朝焼けが見えた。 (――朝靄が晴れたらくさめさんを迎えに行こう。そして、なんでもない今日が始まるんだ。) わだかまりは胸の中にそっと閉まっておく。そんなものがあったことさえ忘れていようとする。 ベッドから起き出すと、気合いを入れるようにペチンと両頬をたたく。 「よし。」 気がつくと、朝靄も晴れたようだ。ユーアリアの街に朝の気配が入り込もうとしている。そろそろ少女を迎えに行く頃だろう。 ――さあ、一日の始まりだ。何でもないただの、毎日が始まるんだ。 >>ver. 戦乙女へ |
(くさめさんは”くさめさん”なのか、それとも”戦乙女”という存在なのか。 問いかけてみるのに、わからないままなんだ) くさめさんからの視点と照らし合わしてご覧ください。 >>イメージイラスト 10・0602 |