ひだまりの夢 ver. 戦乙女

 一人の少女が、森を駆け回っていました。誰かの名前を呼びながら、走り回ります。
 森がぽっかりと空けたところにできたひだまりに、捜し求めた銀の長い髪の少女はいました。
 銀の少女はぼんやりと空を眺めていました。
「どこに行っていたの? 私、すごく探したのよ。」
 銀の少女は視線をこちらにやると、ぼんやりと答えました。
「……どこかへ行っていたの?」
「ええ。ひだまりを探してもあなたは見つからなかったわ。こんなに遠くに来て。」
「……わからないの。」
 銀の少女は透き通った声で言います。
「わからないの。私がどこで、なにをしていたのか。
 ……誰かを見ていたの。だけど、それが誰かがわからないの。」
「誰かを? この排他的な森の中で?」
 銀の少女はこっくりうなずきました。
「あれは、一体誰なんだろう……。とても綺麗な目をしていた……。」
「そんなの、白昼夢よ。この森の中で私たち以外の人に会うなんてないんだから。」
「私たちではなかった。私たちにはない、青い目だったもの……。」
「もう!」
 銀の少女はいきなり手をつかまれてびっくりしました。
「大丈夫? あなたはただ白昼夢を視ただけなのよ。目を覚まして。
 さぁ、もう遅いわ。帰りましょう。」
 そのまま銀の少女は手を引かれて、森の奥へ連れて行かれていきます。
(あのひだまりの中で、私はなにを見ていたのだろう。空のように青い、あの目、あの瞳。決心したように強い、けれど悲しそうな――)
 銀の少女がいたひだまりで、カッコウ、と鳥が鳴きました。




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(私がまだ少女だった時に見た夢の続きを探しているの)

くさめさんがまだ”戦乙女”になる前のお話です。
アルからの視点と照らし合わせてご覧ください。
>>イメージイラスト

10・0602





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